蒼薔薇の書斎

WT2シルバーレイン、WT3エンドブレイカーの日記のお部屋です。

Entries

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

私の大切なひと。2

狐ヴァージョン入ります!
台詞は他PLさまから頂きました。

山が赤や黄色に色づく頃、狐は素敵な日々を過していました。
ある日、枯葉の下で、猫さんと出会ったからです。
猫さんを自分の巣穴に連れて帰って、一緒に暮らすうち、狐はすっかり猫さんが好きになってしまいました。

猫さんの体は、白くてふわふわで、背中だけが少し灰色でそこに白いシマがあります。
猫さんの瞳は、真っ黒できらきら光っています。
猫さんの声は、なーん、と少し甘く、優しい響きです。

それらのすべてを、狐は大好きですが、本当はそれだけではありません。
ただ、ずっと独りぼっちだった狐が、誰かと番いたいとも思わなかった狐が、心の底から惹かれてしまったのです。

…猫さんは、いつまでここにいてくれるんだろう?

狐の心配はそれだけでした。

こんなに優しくて暖かな猫さんですもの、大勢の家族、親しい友人、可愛い恋人がいてもおかしくありません。
そして、そのことを考えると、狐の胸はきゅん、と痛くなるのでした。

…出来るだけ長く、傍にいてくれたらいい。

出来るなら、一緒に冬篭りをして、ずっとずっとここで暮らして欲しいのです。
でも、独りぼっちが長かった狐は、そんなことさえ、猫さんに聞いてみることが怖くてたまりません。
その代わり、毎日一緒にお出かけしました。紅葉が炎のようにキレイに見えるところ、澄んだ水に大きな魚がいっぱい住んでいる秘密の泉。
毎年見慣れている筈の風景でも、猫さんがいると、とてもとても素晴らしく感じます。

幸せ、ってこういうことなのかもしれない。
こんな幸せを、一時でもくれた猫さんに、いっぱい感謝しないといけないのかもしれない…。

狐はそう思いつつも、少しの望みに掛けて、いつもより沢山の食料を巣穴に蓄えておきました。


狐の巣穴には、秘密がありました。
夏でも冷たい空気に満ちていて、一年中氷に覆われている洞窟が、森の地面に隠されています。
人間は、それを『氷穴』と呼びます。
狐の巣穴は、その氷穴と繋がっている部分があるのです。
夏はひんやり涼しくていいのですが、寒い時期は、寝床と石で隔てておかなければいけません。

狐は、氷穴と繋がった場所を、食料庫として利用していました。
いわば、天然の冷蔵庫です。
どんな魚や肉も、そこに小さくちぎって吊るしておけば、自然と干物になって長持ちします。
日持ちする果物は隅に積んでおき、痛みやすい葡萄や柿のたぐいは、やはり吊るしてドライフルーツにします。

今年は、猫さんが木に登ってくれたおかげで、沢山果物が取れました。
柿の枝は折れやすく、狐の体重は支えられませんが、猫さんなら平気です。

どんぐりや栗もいっぱい拾って、サツマイモやヤマイモも掘りました。
狐の冬篭りの仕度は、だいたい整いました。

その頃にはもう、狐は、猫さんのいない生活が考えられなくなっていました。

毎晩、大好き、大好き、と狐は猫さんにすり寄ります。
猫さんの小さな頭が狐のお腹に付けられると、無上の嬉しさを感じます。
それなのに、猫さんは、だんだん元気がなくなってきました。

私のことが、嫌いになっちゃったのかな?

狐は慌てます。もしかしたら、家族や友人が恋しいのかもしれません。

こんなところに独りぼっちで住んでいる狐だもの。猫さんはきっと退屈だな…。

そう思うと、狐は悲しくなってきてしまいました。
そんな狐の思いを裏付けるように、猫さんは最近、毎晩外に出て、どこか遠くを眺めるのです。

猫さん、猫さん、どこかに帰っちゃうの? 私を置いていっちゃうの?

狐はくぅん…と鳴きました。





その年は、中々初雪がやってきませんでした。
雪が降れば、それが根雪となって溶けることなく、春まで雪に包まれるのが、この森の倣いです。
そうしたら、猫さんはどこかにある自分の家に帰るか、あるいは狐と巣篭もりするか、どちらかを選ぶだろうと狐は思っていました。
だけど、それを聞いてしまったら、猫さんは「すぐ家に帰る」と言うかもしれません。

何も聞けないまま、その夜が訪れました。

その日は、朝から寒く、灰色の雲が空を覆っていました。
今日は早く帰ろう。そう声を掛けた猫さんが、とても悲しそうな顔をします。

巣穴に戻っても、猫さんは入り口から身を乗り出して、外を見ているばかりです。

猫さん、そこにいると寒いから、こっちにおいで。

狐がそう言うと、猫さんは宝石みたいな黒い瞳で、狐をじっと見つめました。

―――狐さんは、いつ俺を食べるの?

狐は、目をまん丸にしてしまいました。食べる?こんなに可愛い猫さんを?こんなに素敵な猫さんを??

―――食べてもいいから、いいから…今夜は食べないで。

猫さんは駆け寄ってきて、小さな頭を狐の毛並みに押し付けました。
可哀想に、猫さんの体はすっかり冷え切っているではありませんか。狐はしっぽで猫さんを包み、それからしばらく考えました。
狐は、あまり狩りをしません。猫はおろか、ネズミやウサギなどの小動物も食べることはないのです。
狐が獲るのは、せいぜい何種類かの鳥。それから、はぐれボアなど大きな獲物。
他の動物より長生きなこの狐は、自分が狩りをしだすと、森の迷惑になると判っています。

猫さんが悲しそうだったのは、私が猫さんを食べると思っていたのか。だけど、なんでそれなら逃げ出さずに、一緒に居てくれたんだろう?と狐は考えます。

猫さんのことは食べないよ。

ようやく狐はそう言いました。

だって!冬になって食料がなくなったら、俺を食べるんでしょ? そのために連れてきたんでしょ?

猫さんは真剣です。狐は悲しいような嬉しいような、複雑な心境になりました。
猫さんに会うまで、狐はとても空腹でした。でも、それは体の空腹ではなく、心の空腹でした。
猫さんとの時間を贅沢に食べて、狐の心の飢餓は癒されました。そして、猫さんがいなくなったら、また狐の心は空腹になるでしょう。満たされることを知ったから、もっともっと。

狐は猫さんの首の後ろを咥えて持ち上げます。そして、食料庫に連れて行きました。

ほら、猫さん、冬の間の食料だよ。

狐はしっぽをふりふりします。これだけあれば、二匹で冬篭りをしても、全然問題ないのが猫さんにも判る筈です。

これからお腹が空いたら、いつでもここに来て好きなものを持ってきて食べてね。

狐はそう言うと、猫さんを咥えてまた巣穴に戻っていきました。


寝床に戻って、狐は色々なことを聞きました。
猫さんの家族が、狼に襲われたこと。
最初は親切そうなふりをして、猫さんを騙していたこと。
帰る巣も、家族もなくしてしまったこと。
狐は、何度も頷きました。そして、猫さんも自分と一緒で寂しかったんだな、と初めて気付きます。


…狐さんは、俺を食べないの?

最後に、猫さんは不思議そうに聞きました。

食べないよ。だって、食べたら独りぼっちになっちゃうから。

狐はそう答えて、猫さんをぎゅっと抱きしめました。





(おしまい)
スポンサーサイト

Comment

Comment_form

管理者のみ表示。 | 非公開コメント投稿可能です。

左サイドMenu

カレンダー

04 | 2017/05 | 06
- 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31 - - -

最近の記事

最近のトラックバック

ブログ内検索

ブロとも申請フォーム

右サイドメニュー

始めに。


このブログは、主に【シルバーレイン】
【エンドブレイカー!】
のプレイ日記です。
山吹花のサイトはこちら。
銀の雨の館
お勧め!

リンク



利用させて頂いています♪

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。